帯の文言がすごいです。
「48歳、無職、独身、恋愛経験なし、ずっと引きこもり」
「この世界の全部が僕に死ねと言った」
葉真中顕「鼓動」
ホームレスの老女が殺され燃やされた。犯人草鹿秀郎はもう18年も引きこもった生活を送っていた。彼は父親も刺し殺したと自供する。長年引きこもった果てに残酷な方法で二人を殺した男の人生にいったい何があったのか。事件を追う刑事、奥貫綾乃は、殺された老女に自分の未来を重ねる。もしかしたら私もこんなふうに死ぬのかもしれないー。虚空を抱え人生に絶望するロスジェネ世代の犯人と刑事。社会派ミステリーの寵児が8050問題に迫る、著者二年ぶりの書下ろし長編。
内容紹介(「BOOK」データベースより)
葉真中顕さんのミステリーは「ロストケア」「絶叫」と、とても面白く読んだので、こちらもミステリーとして楽しみに読み始めましたが、ミステリーとしてよりもこの世代の抱える悩み、厳しい現実のリアルに苦しくなりながらも引き込まれて一気読みしました。
1974年生まれの主人公がものごころついた小学校入学前から48歳までの独白が、2022年の事件と交互に語られていくストーリー展開です。その間に起こった様々な事件、世相流行、災害とその影響が時系列に説明されていくので、そこがまたいちいち「あの時は、、」と読んでいる最中に記憶を呼び覚まされます。
主人公より一回りほど上の年代の私は、同じ時期の体験、感じ方生き方が一世代分ずれているわけで、娘の世代はこの世代の一回り下の世代。ロスジェネ世代と言われる世代のリアルはわからない。
がむしゃらに働いてきた挙句に引きこもりの息子を抱え苦労をする主人公の親は私より一回りほど上の団塊の世代。
母の世代は団塊の世代より一回りほど上、戦争を経験した世代。
作中の刑事の「世代なんて関係ない。俺が若いころだって別に楽じゃなかったし、今の若いやつらだって若いやつらなりの苦労があるんだろう。人間生きていれば誰でもいつでも大変なんだ。比べても意味ない」という言葉が心に残りました。