原田ひ香さんの「老人ホテル」を読みました。

埼玉県の大家族で育った日村天使は、生活保護を受け自堕落な生活を送ってきた。大家族ファミリーとしてテレビにも出ていたが、16歳で家を出て、大宮のキャバクラ「マヤカシ」に勤める。そこでビルのオーナー綾小路光子と知り合った。数年後、訳あり老人が長逗留する古びたビジネスホテルにひっそりと暮らす光子と再会する。天使は、投資家だという光子の指南で、生きるノウハウを学ぶことになるが…。

BOOK」データベースより

ストーリーと関係ないところですが、初っ端、「天使」と書いて「えんじぇる」と読む主人公、エンジェルちゃん。本だと漢字の字面をおって読むわけで、最後までどうしても「てんし」と読んでしまい頭の中では最後まで「てんしちゃん」。キラキラネームと言われる漢字と読みが正しく一致しない、イメージで読ませる名前が流行り出してもう長いと思いますが、本1冊読み切る間ではなかなか慣れませんね(^^;

働きたくないがため、生活保護を受け続けるために子供を産み続けるというすごい母親、その両親(主人公にとっては祖父母)からして生活保護、子だくさんの家庭の兄弟姉妹、成人すれば親を見習って(?それが常識、それがお得という感覚で育つ?)生活保護という、生まれたときから回りにいる近しい人すべてがそんな中で育ち世間の常識とかけ離れた感覚、無教養。

でも主人公はそんな自分を恥じ、そこから脱却したいという強い願望があり、自分の常識はおかしいのだという自覚もある。

職場のビジネスホテルに長逗留する老人たちから常識、生きる術など教えてもらうストーリーで、老人たちとの交流、そして主人公の成長、といったほのぼの系かと思いきや、そんな単純なお話ではないラスト。現実的な終わり方でした。それをどう感じるか?レビューがけっこう分かれているのがわかります。

キラキラネームもですが、毒親とか親ガチャなどという言葉も見聞きするようになり、それがテーマの本もたくさん。小説だけでなくルポもたくさんで、読めば「こんな親がいるのか⁈」と驚きますが、驚けるということは幸せなことか。この小説の中にも出てきます。ビジネスホテルに暮らす老人の中の1人として主人公と関わる元編集者の80代の女性。

母親に自分の生き方を最後まで認めてもらえなかったことが心の傷となっており、えんじぇるにつらい思いをした過去を延々愚痴りますが、えんじぇるからしたら「根本から違う」と思われる甘さ。

私もついつい、ブログで母の愚痴を書いたりしていますが、この80代女性と通じるところがありました。その程度の葛藤がある人はごまんといるということなんでしょう。