すごい本を読みました。
「寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ」こかじさら

介護のリアルを書いた本で、妹が「とても面白かった!今kindleアンリミテッドで読めるからおススメ」と教えてくれて読んだ本です。


実話、そして本は終わっても当然現在も進行形なわけで、内容が非常にリアルでシビアです。わが身に置き換えて、今はここまででなくとも近い将来同じことになりそう、もうなっているところもあったりで共感しかありません。

作家さんですから当たり前ですが、文章と表現がとても上手でどれもこれも深刻な事態なはずですが、いちいち笑ってしまう。カラッと明るい筆致で一気読みでした。

妹が絶対おススメ!と言った理由が読み始めてすぐわかりましたよ。
著者の実母が我が母とそっくり!!!!
実母紹介の1行目から私の母そのもの!!

「見栄っ張りの浪費家にして外出好き」

続く紹介も母そのまま。

「毎日せっせと買い物に精を出している。気の強さは国宝級」

最後まで母そのもの。

「足腰や聴力、記憶力や理解力はかなり衰えているにもかかわらず、未だ自己顕示欲は恐ろしいほど強い」

どういうこと??紹介文全部がまるごと母ではないか!こういう人が母以外にもいるのね~~なんと心強いこと。

ただ、著者のこの実母が1番マシなんでは?と思えるほどに、著者が介護にかかわる他の3人が凄まじいんです。実父のいくら説明してもわからず同じ要求を繰り返し絶対引かないこと、お下の世話が必要なことと比べると、とりあえず自分のことは自分でできる実母はまだ手がかからないといえるし、子どもがいないがゆえに著者が面倒を見なくてはいけなくなる近所に住む叔父叔母夫婦、こちらのほうが実父母よりさらに手がかかる。

叔父は認知症で叔母は身体は元気なのに人に頼ってばかりで自分では何もできない人。する気もない人。生活すべてがやってもらうこと前提の人。こういう人が老いて「自分は年寄りだから何もわからないわ」で済まそうとすることが1番やっかいかも・・と読んでいて思いました。

介護というと想像する食事や下の世話、それが出来なくなった時は施設に入所したり公的介助を受けたりとなるのでしょうが、その1歩手前の大変さ、「判断力や理解力の低下、感情のコントロールが利かない、まともなコミュニケーションがとれない」老人たちが引き起こす日々の出来事に苛立ち振り回され、実際、病院、役所、郵便局、銀行、スーパーなどなどを走り回る毎日、何かのたび何枚も書かされ提出しないといけない書類・・・「私のほうが先に死んでまうやろ!」といちいち叫びたくなる著者ですが、大真面目に介護する側のほうが先に死んでしまいそうな毎日だと思います。

プロローグに「日本全国には、個性豊かな高齢者に翻弄され、修行のような日々を送っている同輩が相当数いることだろう」とあります。

4人分ですから、今同じく老親をかかえる人はどれかに「同じ同じ!」と共感できることと思います。

私の場合はエントリー№2実母。

もうね、コロナの時、どうしても外出したい、外出して遊ぶことに異常に執着する実母との攻防戦があまりに同じで笑ってしまいました。母の場合は若いころからヒステリックですごい人だったので老人になってパワーダウンした分マシになっている。「まだいい方なのかもね」と、妹ともそう言い合いました。

著者の場合は実父母、叔父叔母ともにお金の問題がなさそうなことが救いだと思います。
そのための手続きは気の遠くなりそうなほどの煩雑さですが・・・

共感したり励まされたり、著者の奮闘ぶりを悲壮感なくちょっと笑っちゃったりもしながら読める本でした。