4部作の第1作目が素晴らしかったので残り3作も図書館で借りて一気読みしました。

スウェーデンの児童書、アニカ・トール「ステフィとネッリの物語」

4部作の第1作「海の島」の感想はこちらです⇒子供の時以来の児童書ですが面白かったです

第2作:睡蓮の池: ステフィとネッリの物語

ナチスドイツのユダヤ人迫害が日々激しさを増し、母国オーストリアに残った両親からの連絡も途絶えがちな中、姉妹だけで移住してきて1年、姉ステフィは13歳、妹ネッリは8歳に。
父親と同じ医者を目指し、里親の島の家を離れ、奨学金をもらい裕福な家庭の1部屋に下宿しイェーテボリの中学校で勉強に励む姉ステフィ。
里親の家族にますます馴染み、友達も多く、母語ドイツ語も両親の記憶も薄れて行く妹ネッリ。

医師になりたいという確固たる目的があり、勉強熱心で非常に優秀なのに「勉強を続けること」すら難しい境遇のステフィ。まだ子供なのに、周りの当たり前に勉強できる同級生たちとの違いは読んでいて辛いですが、教師や友達、理解者の存在にほっとします。

第3作:海の深み: ステフィとネッリの物語

ナチスの迫害を逃れ、子どもたちだけでスウェーデンの田舎の島に移住してきて4年の月日が流れ、姉ステフィは16歳に、妹ネッリは11歳に。

意欲と優秀さだけではどうにもならない進学問題、自分の置かれた境遇に時に苛立ち、長引く戦争、収容所に送られた両親の心配と、心休まる時のない姉ステフィ。
里親の母を本当の母親のように慕い、里親の実子の姉弟とも馴染むがゆえに本当の家族になりたい気持ちが強くなっていく妹ネッリ。

姉と妹のそれぞれの悩みや疎外感がひしひしと伝わる3作目です。
でも、その悩みや孤独感は姉妹で全く種類の違うもの。

第4作:大海の光: ステフィとネッリの物語

戦争が終わった直後からの物語。
姉ステフィは18歳、妹のネッリは13歳。

戦争が終わっても、中立国であったスウェーデンの人々と同じようには喜べない複雑な事情のステフィとネッリ。

父親の安否不明な中、アメリカに逃れることができた親戚からの2人を引き取りたいとの申し出に心揺れるステフィとネッリ。

引き取られた直後の子どもの時は厳しいと思ったステフィの里親。妹の里親の優しさをうらやましく思っていた子ども時代。ところが成長するにつれ、妹ネッリの里親の頼りなさに気づき、自分の里親の芯の通った強さ、愛情深さに大きな心の支えとなる大切な存在となっています。心から信頼し合える親友もおり、さらに恋人もできようやくスウェーデンの地に根を下ろすことを意識し始めた矢先の姉ステフィ。

7歳から13歳までと、子ども時代をそっくり里親家庭で不自由なく過ごし母語ドイツ語も話せなくなってしまっている妹ネッリ。

姉妹はどういう選択をするのか?

とても面白く引き込まれ、感動する物語でした。
作者のアニカ・トールさんのあとがきを読むと、両親や祖父母、従姉たちなど近親者の実話がかなり盛り込まれていて、それゆえのリアリティある深い物語なんだと納得しました。

シニアにもおススメできる児童書です。
第1作の感想でも書きましたが、児童書ゆえの読み易さなので小難しい内容や細かい字などに根気がなくなってくるシニアにこそおススメと言えるかもです。