佐藤究「テスカトリポカ」

妹が買った本で貸してくれた時に言うことには「すごい内容、メキシコとか中南米の犯罪って日本の比じゃないから凄まじいわ。でも面白いからぜひ」と。その通り、犯罪レベル、犯罪組織や武器が桁違い、登場人物のほとんどが悪い人、というかそんな生易しい言葉では言えないほどの凶悪、残虐、そして宗教がらみの狂気、、、いやはや凄まじい内容でした。

フィクションでしょうが、中南米の麻薬組織なんて想像したら相当恐ろしそうで、小説といえども実際もまぁこんななんだろうなんて思って読みました。銃社会でもなく性善説に基づく善良な人が多く、宗教にのめり込む人のほうがめずらしいととらえられる日本に生まれそれが当たり前と過ごし、そこを基準にすると大変かも?特に犯罪。普通の人でも経験する小さなところでは海外旅行に出れば置き引きに注意、スリに注意、夜は女性1人で出歩くなとイヤというほど言われますもんね。

メキシコ人の麻薬カルテルの幹部が川の話で「おまえの国では流れていないのか?」と日本人に言う場面、何が流れているかといえば死体ですよ、それも殺された他殺死体、そんなものが日常的に流れていたら大変ですよ、連日ニュースで大騒ぎですわ( ;∀;)

あまりにすご過ぎ、自分の日常から現実離れしていると過激な内容に耐性ができてしまい、小説そのものはとても面白かったのでこんなに分厚い本を1日半で読み終わりました。(凄まじいと言いつつ夢中になって読んだってことです)

読む前に帯の宣伝、内容紹介を見て思ったこと。

「このミス2位」⇒これはぜひ読みたい
「文学賞2冠! 直木賞 山本周五郎賞」⇒ストーリーも優れているのでしょう、読みたい!

内容紹介、

鬼才・佐藤究が放つ、クライムノベルの新究極、世界文学の新次元!

メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていくーー。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。第34回山本周五郎賞受賞。

内容紹介(出版社より)

「メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人」⇒いや~~こういうタイプの話はいいわ~あまり読みたくない
「対立組織との抗争」⇒全く読みたくない
「滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく」⇒これは大いに興味あり、読みたい

主要登場人物が麻薬マフィアだの闇医者だ、臓器売買だのと殺人を何とも思わない悪人ばかりで、残虐な描写も多かったですが、家族についての、周りの人たちの生い立ちとか人生もかなり丹念に描かれていたりで、意外にもどんどん読めてしまいました。この小説の主人公のような特別な才能は環境によっては生かされないまま終わる悲しさ。どういう環境に生れ落ちるかで人生は最初からある程度決まってしまう残酷さ。犯罪しかないようなストーリーの中、良心ある純粋な登場人物に救われます。

そして「これがなんで『このミス』?ミステリー要素はどこに?」と思いつつ読みましたが、最後にわかるすごさ。ずっと語られてきたそれが何を意味するのか、最後までわかりませんでした。(アステカ文明とアステカの宗教について勉強してよくわかっている人なら最初から知っていることなのかも)

「アステカ文明」について。
こんなに詳しく読んだのは初めてでしたがとても興味深かったです。
宗教や儀式については実際に見たら卒倒しそうですけど。特に「シペ・トテクの祝祭」なんてもし見てしまったら卒倒じゃ済まなさそう、発狂だと思います( ;∀;)

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