妹が買った本を貸してくれました。それがとても面白かったです。

芦沢央さんの「夜の道標」

1996年、横浜市内で塾の経営者が殺害された。早々に被害者の元教え子が被疑者として捜査線上に浮かぶが、事件発生から2年経った今も、被疑者の足取りはつかめていない。

殺人犯を匿う女、窓際に追いやられながら捜査を続ける刑事、そして、父親から虐待を受け、半地下で暮らす殺人犯から小さな窓越しに食糧をもらって生き延びる少年。

それぞれに守りたいものが絡み合い、事態は思いもよらぬ展開を見せていくーー。

内容紹介(出版社より)

1996年に事件が起こり、その2年後1998年のお話です。

主要登場人物の殺人犯の30代男性が1961年生まれで自分と同い年。事件前年1995年が地下鉄サリン事件、阪神淡路大震災があった年で、物語が進む中で和歌山カレー事件が起こるので、物語当時を自分はあの時は、と非常に思い出しやすく重ねて読み進みました。

1998年、自分は小学生の子供の母でした。
昭和の時代に小中学生だった自分の時代はもちろん、娘が小学生で自分は保護者だった当時も、発達障害という今ではかなり世間的にも認知されている子供たちの特性も、当時はまだまだだったなと思いました。子供の虐待についても、当時はまだ今ほどの社会問題化はされてはいなかったと思います。

そんな当時の、子供たちの発達障害の問題や家庭の中での外には見え難い虐待がからんでのストーリーです。なので悲しく切なくもどかしいんですが、様々な登場人物の視点から語られる形式のストーリー展開なので、虐待されている子どもの親友、発達障害について知らなくてもそういう人だとうっすらとでも理解できている同級生の女性、事件を追う刑事、などの存在が救いとなりながら読み進められました。

最後に、犯人の動機であろうと思われる事実がわかる展開で、母親の視点でやるせない思いになります。
Amazonなどレビューを読むとそこがわかってしまう言葉を書いてあるものが多いです。とにかく動機が最後の最後まで本当にわからないんですが、レビューのページを見るとその言葉がけっこう書き込まれているのでレビューを読まずに読むことをおすすめします。