ミステリーファンの多くはもうすでに読んでいるであろう「カササギ殺人事件」
上下巻そろったところでブックオフで購入し、今頃やっと読みました。

カササギ殺人事件

本屋大賞1位やその他話題にもなっていたしアガサ・クリスティーのオマージュ作品でもあるということで読みたいと思っていたミステリーでした。

ロンドンの出版社の女性編集者が主人公で、彼女が売れっ子ミステリー作家の新作の原稿を受け取りクラウチ・エンドの自宅でくつろぎながら読み始めるところから始まります。
この原稿が探偵ミステリーのシリーズ小説でタイトルが「カササギ殺人事件」

作中作の「カササギ殺人事件」は1950年代のイギリスのサマセット州の村が舞台で、アガサ・クリスティの作品に登場するような舞台。探偵役はエルキュール・ポアロを思わせる人物設定です。

この作中作もミステリーとして楽しめるもので上巻は冒頭こそ現代でしたが、あとは「カササギ殺人事件」のミステリー。物語も大詰め、探偵が犯人を名指しするかと思われる肝心の最後の章の原稿がなくなっている・・・というところで上巻が終わり。

下巻は現代となり、主人公の女性編集者が「カササギ殺人事件」の最終章を探しながら著者アラン・コンウェィの突然の死の謎に迫っていくミステリーへと転換。

冒頭部分にはラストが書いてあるんですよね。主人公の女性編集者の言葉「『カササギ殺人事件』は、まさにわたしの人生のすべてを変えてしまった。わたしはもはやクラウチ・エンドには住んでいない。編集の仕事からも離れた。多くの友人を失うはめにもなった。」とあります。入れ子構造なので最後はもちろんここへ戻りこの通りになるのです。

1950年代のクリスティーのミステリーを彷彿とさせるミステリーと、現代のミステリーの2つが楽しめる入れ子構造のミステリー、よく出来ていてどちらのミステリーも楽しめました。

余談ですが、ミステリー要素以外でも興味を惹かれた部分。

主人公が出版社のミステリー好きな編集者なので、その仕事内容についても書かれていますが、主人公の勤務する出版社は弱小出版社、それゆえに「原価のかさむ料理本には手が出せない」という一文に料理本ってそうなんだ~?と思いました。1ページごとに美味しそうで綺麗な写真が使われていて私にとっては本としては最も好きな本です。フクザツな行程であればあるほどそれを読むのが好き(そういうのは作らないんだけどw)で、たとえレシピを1つも作らない本でもなかなか処分できないジャンルの本なんですよね。原価がかさむからなかなか出せないものとは知りませんでした。

そしてもう1つが、才能のない小説家志望者と売れっ子ベストセラー作家の2人が、全く同じミステリーのプロットを書いた文章を比べるところ。
う~~ん、すごい、才能のない作家志望のほうは本当にツマラナイ。売れっ子作家が書いたほうはすいすい読める。文章教室のお手本みたい(笑)
カルチャーセンターで働いていた時、いくつかの部署で働き通信講座部門にもいたことがあります。その時担当していた講座の1つに「エッセイ教室」がありました。毎月受講生のみなさんが課題のエッセイを書いて送ってこられ、それを先生が添削するわけですが、エッセイとしての文章、読み易い上手な文章に添削するって大変そうだなと思いました。数か月に1度、先生が何作か優秀作を選んで選評を添えて会報に載せていました。会報を作成するのも私の仕事でしたが、何十人もの受講生の中で毎回選ばれる常連さんが2~3人いらっしゃいました。あの時の常連さんたちの誰か、その後作家になった人はいたでしょうか。