妹からまとめて借りた本の中のこちら、優雅なバレエのお話かと思いきや

ヤクザが主人公で最初から最後まで血なまぐさい抗争に次ぐ抗争、暴力と計略、凄まじいお話でした。
暴力シーンはとにかく苦手、小説でもバイオレンスものとか自分では選びません。
貸してくれた妹もそうです。なぜこれを選んだのかといえば、妹はわりとマメに映画を観に行っており直近で観たのが綾瀬はるかさん主演の「リボルバー・リリー」。

それが面白かったので「原作者の長浦京さんの他の本も読んでみた」ということ。そうしたらすごく面白かったからと私にも貸してくれました。

その時「ヤクザの話なんだけど面白いから!」と言われていましたが、読む時にはすっかり忘れ、というか借りた数冊の中の別の本がヤクザの小説だと思い、これはタイトルと表紙で「バレエのお話」だとばかり。「プリンシパル」は主要な、第一のといったトップを表し名刺などに記されている場合は「校長」「学長」「社長」という意味になるそうですが、私の場合バレエに馴染みがあるので「プリンシパル」といえばバレエ団のトップダンサーです。
昭和20年8月15日、主人公綾女が玉音放送を聞くところから物語が始まるので、日本のバレエの戦後史、綾女が先駆者となって昭和の時代にバレリーナとして成長し活躍するお話かと・・・

ところがどっこい、すぐにやくざの争いの暴力の凄惨なシーンで正直「うわーーこういうの苦手なのよ、最後まで読めるかなぁ」と不安に・・・

でも、それを差し引いてもめちゃくちゃ面白くて没頭。一気読みでした。

戦前から続くヤクザの本家。戦中は違法な手段で横流し物資を溜め込み、敗戦後はいち早く闇市を支配、暴力と犯罪で莫大な資金を得て焦土と化した都心1等地不動産を次々手に入れる。やくざの組から商社を名乗りGHQ、政治家との密接な関係を軸に芸能界、企業、マスコミも支配。政治的な人脈と権力、莫大な資金で表の顔の商社は大企業にのし上がっていく。あらゆる業種を子会社として傘下に収め重役には戦前からの組の幹部を据える。大企業になれども裏の顔はやくざ、企業としての勢力拡大もやっかいごとを解決するのも常に変わらず暴力と脅し。潤沢な資金源は違法、犯罪がらみ。が、本社が大企業へとのし上がっていくほどに社会貢献事業や文化事業も手掛け裏の家業も一般人には分かり難くなっていく・・・

主人公は本家の末娘でやくざ家業を嫌って教師の職に就いたものの、家長である父の死で兵役にとられた兄たち不在の間のつなぎのつもりで敗戦直後の混乱期、家業の長を代行する。でも兄3人よりやくざとしての才があり、やくざの家の血の濃さを自覚していくという面白いストーリー設定で、やくざ本家がまっとうな企業の面を被ってのし上がっていく過程やGHQ、政治家、芸能界との関係も興味深く読みました。

フィクションでも「あるかも」と思ってしまうし( ;∀;)まぁそうなんだろうな~と思っていることが思い切り「そうなのだ!」と書かれているようなものだったり。政治家や芸能人、名前の一部を変えてますけどモデルが誰かはすぐにわかりますので「え?あの人ってこんなだったの?」と思ってしまいますが・・・フィクションでしたね。フィクションでも政治家や芸能人がこれとわかるモデルなので組もモデルはどこだろう?なんて考えちゃいましたがモデルはないのでしょう。いくらなんでもすご過ぎるから、あそこがモデルじゃないかなんて想像されるだけでも企業は迷惑であろうお話でした。

フィクションなので最後の最後、いったい誰が黒幕なのか?といったミステリー要素も楽しめました。2023年の「このミス」の5位の作品です。(映画化されたリボルバー・リリーは2017年の6位です)こういう系統の本はちょっと・・・と苦手意識を持つ人は多いかと思いますし、私もそうなんですがこれは没頭してしまいました。たまには違った系統のお話、縁のない世界、ミステリーも楽しみたいと思っている方、おススメです。