こちらも妹おススメの本。図書館で借りて読みました。しかし、妹、いったいどれだけ本を読んでいるんだか。(面白かった本だけオススメしてくれているので、オススメの何倍もの本を図書館で借りている様子)私以上の頻度でジムにも通っているのに、どの時間を削って読んでいるんだろうか?私は面白かった本だけ教えてもらえて有難いけど(笑)
辻堂ゆめ「十の輪をくぐる」
タイトルが素敵だと思います。十の輪とは1964年の東京オリンピックと2020年の東京オリンピック。1950年代後半~1964年の東京オリンピックのころまでの母、2020年の東京オリンピック間近の2019年の子と孫の世代、3世代に渡っての人生のお話です。
母の時代と子と孫の現代のストーリーが交互に描かれて進みます。
1950年代、中卒で九州の農村から集団就職、紡績工場の女工として働く傍ら仲間とバレーボールに打ち込む母。当時の全国の工場のレクリエーションとしての部活動はバレーボール部が人気。繊維会社のチームに実業団バレー部の強豪がそろっていたことなど、東京オリンピックの年には3歳だった私には覚えがないことですが、その後大ブームとなったバレーボールはマンガを読みアニメも観ていた「アタック№1」で相当な影響を受けました。本は実業団バレー部のお話だった「サインはV」のほうが近いですが。
学校が終わった後、友達とサーブ木の葉落としや三位一体のクイック攻撃を練習しましたっけ。懐かしい思い出です(笑) まだ「子」のつく名前が多かった1960年代当時、私と妹の名前は「子」のつかない両親はなかなかにモダンなセンスだったんだと思うものですが、子ども心に「こずえ」という名前はかなり印象的でしたね。
主人公の母が女工の仕事を終えたあと仲間とバレーボールの練習をする描写、頭の中で自然と浮かんだ歌はアタック№1のアニメのオープニングソングの方ではなく「青い、青い空に~バン、ボ、ボン~はずむボールが夢を描く~」のエンディングの歌でした。仕事は辛くとも大好きなバレーボールに仲間と打ち込む青春といった感じで。でも母の人生はそこから怒涛の展開でした。
2019年の息子世代のストーリーでは「生きづらさ」の問題に焦点があてられていてそちらも興味深く読みましたが、1950~60年代の母のほうが、女工、集団就職、農村の女性たちの結婚観、結婚、炭鉱の生活、夫の暴力、田舎の閉鎖的な生活、男尊女卑、当時の子育てと、やはり桁違いですね。
息子の年齢設定が私と同じですので、作者も同じくらいかな?と思ったらなんと、娘と同年代の1992年生まれでした。当時のことがあまりにもよく描けていてびっくりしました。
私が子育てした1990年代は「発達障害」について認知され始めたころでした。わからないことのほうが多かったですし、そういう子どもにはどう対処してよいかの情報もまだまだだったと思いますが、それでも「そういうものだ」とわかっていたことは子育てする母親にとっては心強かっただろうと思います。でも、それ以前はすべてが「母親の子育てが悪いせいだ」とされることが多かったわけです。その物理的な大変さ精神的な辛さは計り知れない。
大変面白く読みました。おススメです。
ちなみに、冒頭で2020年東京オリンピックのチケットが当たらなくて主人公がガッカリするシーンがあるのですが、我が家は家族3人分のチケットが当たって当日を楽しみに待っていたのに無念、コロナで無観客となったのでした。当たると思ってもいなかったものが当たったゆえにガッカリ度相当でしたよ(ToT)
どうせ当たらないと思って人気競技の水泳、柔道、体操の3種目の決勝の1番良い席(S席という呼称だったか?)ばかり申し込んだんです。そうしたら柔道団体の決勝が当たったんです。柔道の男女混合の団体というのは東京オリンピックからの新種目でしたから本当に残念でした。
けど、3人分のチケットを購入したのは当たった時。その後延期となりさらに開催しても無観客ということでチケット代が返金されました。1番良い席のチケット3人分だったため、けっこうな金額だったんです。たしか27万くらいだったと思います。それが忘れたころに戻ってきてそれはそれで嬉しかったです(笑)