今年のお正月はお正月気分になんてなれないお正月となってしまっています。

JAL機と海上保安庁の航空機の衝突事故、能登半島地震の援助物資搬送中で乗員5名が命を落とすというやりきれないニュース。職務中だった隊員の方々のご冥福をお祈りいたします。JAL機の乗客が全員無事だったことが救いですが、着陸と同時に炎に包まれていましたから窓からその様子はもちろん見えていたでしょう。さぞかし怖い思いをしたことと思います。

エマージェンシーの際の90秒脱出、新人訓練の時も、CAになった後も1年に1回の訓練時に叩き込まれました。脱出用スライドを出す際は危険がないか窓の外をよく確認してから、というのが基本でしたが問答無用で速攻脱出の条件が火が見えた時。今回はまさにそれで本当に最も大変な脱出だったと思います。

CAは子供のころ、テレビドラマ「アテンションプリーズ」を見て子供心に「外国へ行ける仕事なんて楽しそう!」と憧れたことがきっかけでした。そんな昔なので私のときはスチュワーデスでCAという言い方ではなかったですが。現実的にCAの採用試験を受けることを考えていた時に、羽田沖墜落事故が起こりました。「逆噴射」と言う言葉が有名になってしまった事故です。

さらにCAになってすぐ、本当に1番の新人の時に123便の事故が起こりました。

自分の乗務した便で危険な目にあったことはサンフランシスコ空港を飛び立ってすぐにバードストライクで空港に引き返したこと。飛行を続けることが困難な危険な状況でしたが、離陸したばかりだったのですぐには着陸できずサンフランシスコ沖を旋回しながらのフューエルダンピング。いざ着陸する時も緊張してエマージェンシーの際の脱出手順を頭の中で繰り返していたあの時のことを今でも覚えています。

昔の職業柄飛行機事故というものをより身近に感じ体験もしていますが、飛行機の事故を心配していたら車になんて乗れませんし、道も歩けません。
車で事故に遭う確率のほうがずっとずっと高いですから。
でも、飛行機の事故は起こった時の規模と被害と与える恐怖が大きすぎる。

炎上する機体の映像があまりにも衝撃的でしたが、全員脱出の報と、実際に垂れている脱出用スライドを見てほっとしました。

現実に使われたスライドを見ていて、お年寄りや赤ちゃん連れの方たちもいたでしょうに大丈夫だっただろうかと考えてしまいました。私の乗務していた時はジャンボと言われた大型機、ボーイング747がほとんどでした。1階席からだってけっこうな高さと傾斜がありましたから、2階席のスライドなんてかなりすごかったです。「今の飛行機は小さくスライドも低いからよかった」なんてことを考えてしまいました。

そしてさらに昔と違って今の女性がおしゃれな服装の時でも、老いも若きも足元がスニーカーの人が多いのは良いことだなと、そんなことを思いました。

エマージェンシーが起こった際、大きな声で乗客に繰り返す言葉が決まっていました。(緊急脱出なので今でも変わってないと思えますが)

ベルトを外して!荷物は持たないで!ハイヒールは脱いで!

です。

ハイヒールで滑っている途中にヒールでスライドを突き破ってしまう可能性があるから。
自分もそこで突っかかって転落し怪我する可能性が高いですが、そのあとの乗客が脱出できなくなってしまうので脱出用スライドに乗客を押し出す際、ハイヒールを履いた女性は強制的に靴を脱がすように訓練されました。

脱げと言われておとなしく素早く裸足になってくれるものか?1秒を争う事態の中そこで手間取るのではないか?と不安に思ったものです。真剣な訓練中でしたがそんなことをふと考えた、それくらい昔はハイヒール、パンプスの女性が多かった。今は街中でも電車に乗っても通勤と思われる女性でも、足元のスニーカー率、高いですね。

制服の靴はハイヒールとローヒールがあって、出社して着替える時から機内準備、離陸ギリギリまでハイヒール。離陸間際にローヒールに履き替え、機内サービス中はローヒール。着陸して安全が確認されたらハイヒールに履き替えてお客様をお見送りする、と決まっていました。無精者の私は正直なところ靴を1足持ち歩くのがとっても重くて嵩張って嫌だったんですよ。

スライドを滑る時は上体を起こして理想は90度、両手を前にまっすぐ突出して、足は肩幅に開いて滑ります。切迫した緊急事態に正しい体勢、咄嗟にできないかもですが、、そしてそんな機会が一生のうちにないのが理想ですが。