町田そのこさんの本屋大賞ノミネート作、「宙ごはん」を面白く読んだので(本屋大賞ノミネート作品とどうしようもない母親たち)1番有名であろう本屋大賞受賞作の「52ヘルツのクジラたち」を始め3冊をまとめて妹から借りて一気読みしました。

「52ヘルツのクジラたち」が本屋大賞で、

「星を掬う」は本屋大賞ノミネート作品。「宙ごはん」もノミネート作品でした。本屋大賞は書店員さんの推す作品。面白い作品が多い印象です。

大賞受賞作「52ヘルツのクジラたち」
52ヘルツのクジラとはなんぞや?と思いましたが、この世界には自分1人しかいない、自分の声を聞いてくれる人はいないと、そこまでの究極の孤独の象徴でした。
両親からの無関心と虐待、ヤングケアラー、シングルマザーの母親からの暴力と言葉での虐待、恋人からのDV、LGBT問題と社会問題がてんこ盛り。主人公の母親の虐待が残虐な暴力シーンではないのに読むのも不快になる酷さ。

主人公には手を差し伸べて力になってくれる親友、好意を寄せて助けてくれる男性も都度現れるので救いがあって良かったですし、救いのない後味の悪い小説をわざわざ読みたくはないですが、現実にこういう問題はある、現実には親友とか男性の助けはないことのほうが多いんだろうし・・・と思わず考えてもしまいました。

「星を掬う」も母と娘のこじれた関係が修復されていくまでのお話です。
母に捨てられた娘が傷ついた心、傷つけられたと母を恨む気持ちをどう克服し再生していくか、夫からのDVの恐怖とトラウマなど、話は重いですが読後感は良いです。

「うつくしが丘の不幸の家」は1件の新築の家の歴代の持ち主の5つの家族それぞれのお話。新築だった家はちょっと残念な古さになったところから始まり20年ほどを遡るお話です。全く違う家族、人生、でもどこかで関連し合った短編集の形式。こういうストーリー展開はかなり好きです。面白かったです。

町田そのこさん、家族間(特に母と娘)のこじれた関係を中心としたお話が多く、小説なのでこじれたどころじゃない悲惨さもあって読んでいる途中は暗澹たる気持ちになったりしますが、身内間の気持ちのすれ違いやこじれは誇張された小説ほどのものではないにしても、誰しも少しはあるものでしょうし、再生の過程は考えさせられます。